omid_krkのブログ

思ったこと

3年間

 

高校を卒業した。

 

私は高校生活があまり好きじゃなかった。

 

周りと馴染めず、クラスメイトとも全く喋らずに過ごした。

 

授業中に組まされるペアワークだって、最低限の会話しかしないし、苦手な人となると声を出す勇気がなく、黙ったままでまともに会話できなかった。

 

文化祭だって一度も参加していない。それ以外の行事だって、打ち上げ的なものには一切参加しなかった。

 

そして、遅刻が多かった。思春期の精神の不安定さとか、自身の怠惰さとか、いろいろ理由が重なっていたと思うけど、遅刻してでも学校に来ていたのは確かな理由があった。

好きな先生がいたからだ。

 

HRもしくは先生の担当の授業で会うために、遅刻してでもほとんど学校に行っていた。4時間目が終わっていても、5時間目に先生の授業があるなら5時間目からでも学校に行った。

 

その先生は、3年間担任でもあり、教科担当でもあった。先生の担当の教科はもともと好きな方だったけど、高校生になってからもっと好きになった。

先生の教科の成績は割と良い方だった。先生に、こいつ、なかなかやるなと思ってほしくて、あわよくば褒めてもらいたくて、頑張っていた。

 

授業中にみんなと同じようにアドバイスをもらったり質問したりするのがなんとなく恥ずかしくて、私一人の力で余裕で解けますよという感じですましていたけど、授業終わりに先生と喋りたくて質問しに行っていた。

 

出席番号順に回ってくる日誌の“最近思っていること”の欄には、何を書こうか前日から考えて、誰よりも丁寧に書いた。そして、次に回ってきた時に先生からのコメントを読むのが楽しみで仕方なかった。

 

なぜだか、皆んなの前では先生と喋るのが恥ずかしかったから、年に2回ほどある二者面談は最高のイベントだった。

 

面談をする日と時刻は、まず先生が仮の予定を組むのだけど、私より後の時間に面談する人がいたらたくさん喋れないと思って、面談の時間をわざとその日の1番最後にずらしてもらった。それに、雨の日だと湿気で髪の毛がぺったりしたりうねったりして最悪だから、天気予報の晴れの日を調べてできるだけマシな状態で臨める日にしてもらうこともあった。

 

当然、面談は進路や勉強についての真面目な話がほとんどだけど、一緒にいることができるだけで嬉しかったし、映画や本、先生についての話をしてくれる時は本当に幸せで、帰るのが惜しくてたまらなかった。長い時は1時間を超えて面談をした時もあって、喋っている時は楽しかったけど、帰った後で長い時間を割いてもらったことに対する申し訳なさでいっぱいになった。

 

冬になると、受験勉強のためにしばらく学校に行かなかった。受験のモチベーションは、先生に褒められることだけで、他はどうでもいいくらい、やればできるんだと思われたくて、良いところを見せたくて、よく頑張ったねって認められたくて、ただそれだけだった。だから、第一志望の学校に受かったことを報告できる時は本当に嬉しかった。友だちよりも、親よりも、誰よりも早く先生に連絡した。普段は堅い文章なのに、びっくりマークが付いた返信がすぐに来て、舞い上がった。

 

そして、久しぶりに登校して、直接先生に報告して、たくさん褒めてもらって、最近観た映画やゲーム、音楽の話をして、おすすめの本も2冊貸してもらった。わざわざ家から持ってきてくれたようで、すごく嬉しかった。それに、今まででの私では信じられないけれど、握手もしてもらった。もう、こうしてゆっくり話せる機会は無いと思って、帰る直前に頼んだら快く引き受けてくれた。すごく緊張して、嬉しくて、温かかった。なんだか恥ずかしくなって逃げるように帰ってしまったけど、帰り道で心から死んでもいいと思った。というか、このまま死にたいと思った。

 

卒業式ではほとんど喋ることなくお別れをした。本当はもっとちゃんと感想を伝えたかったけれど、写真を撮ったりで忙しそうで引き留めていられなくて、本に短い手紙を挟んであることを伝えて返した。本当はさりげなく、かっこよく返したかったけど。もう一冊は、最後まで読めなかったことを伝えたら、記念としてそのままもらえることになった。信じられないくらい嬉しかった。そんな感じで短い会話をして別れた。話せば話すほど別れたくなくなるからよかった。

 

 

この3年間は先生を中心に世界が回っていた。

 

先生が話していた作品は全部メモして、実際に本を読んでみたり、先生の世代で流行った文化を調べてみたり、先生はどんなものが好きなのか知りたくて、ストーカーと大差ないことをしていたかもしれない。

 

他の女の子と話しているのが嫌だったし、男の子と話しているのにも嫉妬した。前髪を上手く巻けなかった日は、先生の視界に入りたくなくてそっぽ向いてる時もあった。あんまり遅刻が多いから、通信制にしようと親に言われた時も、先生と離れたくなくてどうにか阻止したなんてこともあった。

 

高校生が見ている世界は狭いんだと思う。でも、バイトをして同世代の人と関わったり、好きなことを見つけて没頭したりもしたけど、やっぱりずっと先生のことを考えていた。

 

先生には本当にたくさん迷惑かけたと思う。面倒な生徒だったと思う。自分が満足したいがために、長い時間先生を引き留めたり、握手を要求したり、本当に申し訳ない。

先生は仕事でやってるから優しくしてくれてるのも、他の子にも好きなものを話しているであろうことも、こんなに依存してしまうのは良くないってことも、全部わかっているつもりなのに、本当に大好きで、先生と喋れた日は心の中で小躍りしていたし、先生に話しかけられなかった日は一日中憂鬱だった。

 

先生への気持ちは、恋と尊敬を混同してしまっているだけだとか、若い子によくある年上への憧れだとか、同世代と交流できなかったから対等に接してくれる人間に勘違いしているだけだとか、大人に甘えたかっただけだとか、どれが本当かわからないし、全部含んでいる気もする。

 

もう会えないのに、このままずっと好きなのはつらいだけだから、もっと良い人を見つけてやるぞ、と強気でいきたい。卒業式前日は、けじめとして中島みゆきの化粧を聴いていたし、終わった今でも聴いてしまうけれど。卒業しても連絡くれると嬉しいです、なんてことを二人きりの時に言うから、浮かれてしまいそうになるけど、ただ純粋に、先生と生徒としての良い関係でいられるように、この気持ちを思い出として断ち切りたい。いや、でも、言われた後に握手を要求したから、恋心を悟られている今となってはもう、連絡しない方がいいのかな。だけど、もっと前から私から好き好きオーラが漏れ出ていて、正直バレていたと思うんだけどな。

 

だらだら書いてきて、結局何が言いたいのかよくわからなくなった。そもそも、伝えたいメッセージがあるわけではなくて、ただ吐き出したかっただけなんだけど。振り返ってみれば先生のために生きていた3年間だったな。大好きで、忘れられなくて、寂しくて、ずっと考えてるけど、そういう時期もあったなと次に進めるようになりたい。案外すぐにそうなるのかな。